二藤建人, 山下耕平, 川田知志, 須賀悠介
中景: Act III「岩は木のことを知らなかった。」
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2015年のAct Ⅰ(会場: TEZUKAYAMA GALLERY, 大阪)、2016年のAct Ⅱ(会場: HOTEL ANTEROOM KYOTO, 京都)に続く、同シリーズの第3回目となる企画展であり、初の東京(会場: LEESAYA)と大阪(会場: TEZUKAYAMA GALLERY)の2都市での同時開催となります。
今展では、コンセプトやメディアも異なる4名のアーティストが遠景と近景のあいだ、「中景(ちゅうけい)」という極めて曖昧で不明瞭な概念 を起点としながら、物理的な距離感覚というテーマに留まらず、時間や身体的な距離など、各々の解釈で作品に転換し、1つの展覧会を作り上げる試みです。
最終日の7月23日(土)には両会場をオンラインで繋ぎ、アーティスト・トークの開催も予定しております。 是非とも両会場合わせて、ご高覧賜りますよう、お願いいたします。
展覧会ステイトメント
「中景」とは何か。この問いを契機とした展覧会も“Act Ⅱ”から6年が過ぎようとしている。少し間を置いた(だが自分にとっては唐突に)2022年夏、この問題について再考する。
大阪と東京、距離を隔てた2つのギャラリーで同時開催する今展は大阪では二藤建人と川田知志による、東京では山下耕平と須賀悠介の組み合わせで行う。ただし、二人展ではなく、あくまで4人による展覧会であることに注目してほしい。
昨年秋、本展に向け準備をするにあたり、まずは参加メンバーの共有体験として、愛知県新城市にある乳岩峡を周遊することにした。遊歩道脇の沢筋には巨岩が点々と転がり、上部には大きな木がその岩を掴むように根を張っていた。副題にある「岩は木のことを知らなかった 。」とは、その様子を見た際に川田が発した言葉である。
ここで岩と木の関係を考えてみる。岩と木の間に土を見て取ることはできない。まさに岩と木が接続している状況であるわけだが、「中景」がないということではなく、むしろそのあいだの距離や空間、時間についての想像が掻き立てられる一場面であった。またこの言葉は、この展覧会の構造そのものを表しているとも言える。接触しているような、曖昧なような、だが確かに繋がっている。距離を持ちながらも一つの展覧会であろうとする姿勢そのものではないだろうか。
このシリーズは、これまで身体性を手掛かりとして作家を選出、構成してきた。山下は、登山という身体経験による距離感覚の測り直しで現れる現在位置を、コラージュを中心とした様々な手法で表現する。須賀は、触覚と視覚のあいだ、破壊と創造のあいだを行き来し、彫刻的表現を中心とした発表を行う。二藤は、愛や重力など不可視の力学を、パフォーマンスを多分に孕んだ立体作品として可視化する。そして、今展から参加する川田は、フレスコ画という古典技法を引用し、場所(その多くは巨大な壁面)と向き合う中で、絵画空間と身体との無意識の調整を取り計らう。
新型コロナウィルスの感染拡大は、人と人との距離を隔て、移動や対面でのコミュニケーションが大きく制限される中、様々なレベルにおいて、距離に対する認識や感覚が大きく揺さぶられている。この展覧会を通じて、「中景」あるいはあいだの感覚に少しでも触れる機会となることを期待したい。
山下耕平