LEESAYA

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安藤晶子, 辰田翔, 金光男, 髙橋銑

遠い日常


 2019年10月にLEESAYAが開廊して以降、世界では様々な出来事が目まぐるしく巻き起こりました。COVID-19によるパンデミックや、ミャンマーでのクーデター、Black Lives Matter運動、各地での異常気象や、現在も続くロシア・ウクライナ間での戦争、物価高騰…思えばこの3年間、「まともな日」が一日でもあったでしょうか。私たちは日常的な非常事態に傷つきながらもなんとか今日までやってきました。いつからこんなにも刺激的な日常が常態化したのでしょう。はじめからそうだったのかも知れませんし、この先にもっと大きな変化が待ち受けているのかも知れません。

 そんな状況下で芸術や音楽は、目まぐるしく変わる日々の速度を緩め、時には立ち戻り、方向を変える可能性を示唆します。とてつもなく早い流れを耐え抜くため、私たちは歌を歌い、絵を描き、現在地を確かめているのかも知れません。

 安藤晶子は気が遠くなるほどの細かな描写をひたすら繰り返すことで安寧への祈りと日々を紡ぐささやかな願いを描き出します。何かを美しいと感じる心を解放していった時間の過程が絵になっている、と彼女は話します。
 移民のルーツを持つ金光男は、社会の多様性に対する許容も進み人種や国籍を問わず人々が自由に自己実現をできるとされている時代に、個人が免れない孤立や矛盾、思想の違いによる対立と葛藤を浮き彫りにします。
 髙橋銑は彫刻作品の保存修復の経験からどんなものにでも終わりがあり、それは表現を行う自分自身も例外ではなく、存在の不確かさを認めながら悲観的だけではない眼差しで物事の終わりに対峙します。
 音楽家である辰田翔はコロナ禍で海外への渡航が難しくなった現状を受け、国内での移動を活発に行い、様々な人や場所に触れ作品制作を行って来ました。環境に合わせ音響作品を制作することで、人々の暮らしに溶け込み、時に変化をもたらします。

 4作家の作品に込められた多様な視点を通し、日常の尊さを思い出し、豊かさの在処について考えるきっかけになることを期待します。LEESAYA3周年記念展 遠い日常 を是非ともご高覧ください。

遠い日常