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安藤晶子

庭園


 安藤晶子(あんどう・あきこ)は 1987年茨城県に生まれ、東京工芸大学デザイン学科卒業後イラストレーターとして、ルミネ池袋でのショーウインドウ制作や、本の装画、CDのアートワークなど、数多く手がけてきました。
彼女の主な制作方法は、水彩絵の具とコラージュによるもので、あらかじめ自身が描いた絵を切り貼りし、画面が構成されていきます。ポートレイトをはじめ、植物や器など彼女の眼に映る世界は幻想的で、どこか懐かしい雰囲気が漂います。独特の色彩や、触れたくなるような質感の組み合わせは秀逸であり、画面の奥行きには物語を感じさせます。

 安藤の作品からは様々なジャンルのクリエイションの影響がみてとれます。拾い集めた新聞や雑誌、漫画のイメージをスクラップブックに貼り付けて保管し、作品にもコラージュしていたヘンリー・ダーガーは、安藤も大好きな作家のひとりだと話します。また、今では当たり前にサステイナビリティが重視されていますが、エコというキーワードが定着する以前から、エコロジーをコンセプトにしていたファッションブランドのスーザン・チャンチオロも、安藤にとって刺激的なインプットになっているそうです。可能な限りオーガニック・リサイクル素材を使用し、時にはハイエンドブランドの服を切り刻み「リ・パーパス(目的を新たに設定する)」するなど、注目を集めています。収集と創作が密接に関わり、丁寧に作り上げられる制作スタイルは、安藤の作品においても、共通点が多くあります。

 今回の展覧会では、「光、遊び、自由」をテーマに、初の試みとなる箱庭作品を展示します。作家は日頃からよく公園や庭園に赴くそうです。花や緑に癒されながら、体を動かし、喧噪や多忙から逃れ、考え事からも距離をおけるこの場所で、彼女自身の軌道を修正するプロセスは、制作活動ととてもよく似ていると言います。筆をとりながら、コラージュを積み重ね、色や形の組み合わせの正解を幾度となく検証し、時には机から離れ、ひとつの画面にたどり着く作業は、日常の言葉にできない感情や、忘れてしまいそうな感覚を紡ぎ出す行為そのものと言えるでしょう。

 普段は紙を支持体として、制作してきた安藤ですが、本展では複数の絵が箱の中で再構成され、一つの作品から様々な物語を感じさせる作品群を展示します。様々な分野で活躍する少壮気鋭の作家、安藤晶子の個展「庭園」を是非ともご高覧ください。

作家ステートメント

名前のつかない感情
だれにも気づかれない物語
生きてきた時間を振り返るとき
小さすぎて、今にも
なかったことになってしまいそうな
出来事ばかりがいびつに輝いている

安藤晶子

庭園