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須賀悠介

Modification of Destiny


須賀悠介(すが・ゆうすけ)は 1984年東京都に生まれ、SFや科学哲学などを参照し、立体作品をベースに、日用品を用いたオブジェや3DCGの映像作品など、様々な素材からなる新奇な作品を制作しています。近年は「高松コンテンポラリーアート・アニュアルvol.06/物語る物質(高松市美術館、香川、 2017年)」、「Ghost Roaming(LAGE EGAL RAUM FÜR AKTUELLE KUNST、ベルリン、2016年)」、「Duality of Existence(FriedmanBenda、ニューヨーク、2014年)」など国内外の展覧会に参加し、意欲的に発表を続けています。

須賀は作品の中に相反する要素を並存させ、物事の矛盾やエネルギーそのものを可視化させます。形を留める臨界で静止した母子像や、自らの暴力性によって破壊されていく斧や弓矢など、秩序と混沌が奇跡的に保たれた状態を立ち現わせます。モチーフや素材の選択から、造作の緻密さ、テクスチャーに至るまで、須賀の高い造形力に裏付けられた作品は、世界の危うさや、儚さ、その上に成り立つ美を鑑賞者に感じさせ、私たちの住むこの世界がいかに絶妙なバランスで保たれているかを気づかせてくれます。

須賀は身体機能の拡張や、時空の往来など、人類が元来超えられない様々な制約を、どのように克服できるか考察し続けてきました。本展「Modification of Destiny」で発表する新作は、人類が近代化という物差しで、自らに課した不自由な常識や、美意識を乗り越えるための新たな試みを実践する展示となります。

作家ステートメント

人の姿と顔が気になる。街中ですれ違う見知らぬ人のことも、一見してその人のパーソナリティをなんとなく把握できる。彼女は社会的にどういうグループに属していているのか。彼はどのような趣向性があるのか。瞬時に顔を認識するという能力は人が持つ能力の中でも高次のこととされている。しかし、近年、革新的な進歩を見せるディープラーニングなどのAI技術では、コンピューターも人の顔を個別認識できるそうだ。それは、コンピューターが人にキャラクターを与えていると言えるのではないか。また一方で、顔改変アプリを使用したプロフィール画像(映像)を使用してチャットする〈各国の美女たち〉は、ディスプレイを通して視聴者たちを満足させていると言えるのではないだろうか。さらには、自らの身体に改造を施す人たちの存在はどうだろう。彼女ら/彼らは身体改造という新たなタグ付けがなされることによって出自のジェンダーや国籍というタグ=アイデンティティを無効化しようとしている。

わたしたちはもはや、目の前の現象を真実だと認識することができない。いや、もはや認識する必要すらないのだ。真実は事実に由来しない。わたしたちはテンポラリーな美に満足し、その宿命に甘んじている。でも、その先にまだ美はあるのだろうか。

わたしは新しい生命を見たい。見たことのないキャラクター、人智を超えた存在を見たい。

新たな生命は死を克服するだろうか。
生命のサイクルを超越することは可能だろうか。
科学や宗教は、死に抗う方法だ。きっと芸術も死に抗う方法だったはずだ。
わたしは今もどこかでそれを信じている。

須賀悠介

Modification of Destiny