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皆藤齋

現れるのに勝手はない


皆藤齋(かいとう・いつき)は1993年北海道札幌市に生まれ、在学中より第一期・第二期クマ財団奨学生、2017年にはCAF賞ノミネート、2019年には京都市立芸術大学大学院を修了後、現在は東京を拠点に精力的に制作活動を行なっています。日本をはじめ、ヨーロッパや中国、韓国など国内外で活躍している注目の若手アーティストです。

皆藤の作品は主にキャンバスに油彩で描かれており、不穏な雰囲気が漂いながらもビビットな色使いと一見、恣意的にもとれるモチーフの配置が印象的です。描かれているモチーフは、顔のない男性や、奇妙な形の犬や虎、不思議なオーラを放つぬいぐるみなど様々ですが、鋭く尖った爪のような器具や、ベルト、ハーネス、刃物など暴力を連想させるモチーフが一貫して画面に登場します。

9歳頃からコンピュータで描いた絵をインターネットの掲示板に投稿していた作家は、いわゆる上手な絵を描く、ということには注力してきませんでした。むしろ社会生活では決して見ることのできないアンダーグラウンドコンテンツから多くの影響を受け、皆藤独自の世界観を作り上げてきました。描くことで自己と向き合ってきた作家にとって、性的で非道徳的なイメージを扱うことは社会に対する怒りや疑問をぶつけているわけではありません。むしろアンチモラルや羞恥心を孕んだナルシシズムといった、多くの人の心に潜在的に存在する利己的な内面世界を表現することで、常識や社会性からは逸脱していたとしても、それ自体が救いになり得、同時に芸術そのものが同様の性質を持っていることに気付かされます。

今回の展覧会では、星座や重なり合ったベルトの目など、無意識のうちに、受動的に意味のない様々な物から、メッセージを受け取ってしまう人の性に目を向けます。意図しない読み取りには深層心理が働いており、そこには経験や知識など、確固たる理由が作用している、言い訳のできないものだと作家は話します。新たに登場する不思議なポットや、星座のようなモチーフの中に観賞者は何を見出すのでしょう。
国内外で活躍の場を広げている新進気鋭の作家、皆藤齋の個展「現れるのに勝手はない」を是非ともご高覧ください。

現れるのに勝手はない