LEE SAYA

宮原嵩広

Null Pointer Exception

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4月18日(土)より開催を予定していた宮原嵩広 個展「Null Pointer Exception」の開催は延期いたします。

詳細情報につきましては弊廊ホームページ、SNSで追って告知いたします。

皆様にはご不便をお掛けいたしますが、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

----------

 宮原嵩広(みやはら・たかひろ)は 1982年埼玉県に生まれ、映画製作に関心を持ち、バンタン映画映像学院スペシャルメイクコースで特殊メイクの技術を学びます。卒業後、しばらくは特殊メイクの仕事をしていましたが、造形力を補うために通っていた美術大学予備校で彫刻の基礎を学んでいくうちに、美術の面白さを感じ、東京藝術大学美術学部彫刻科に進学。同学、修士課程を修了します。

 人は大きな石の塊を見れば、「これは大体大人4人でやっと持ち上げられる重さだ」、「表面はひんやりと冷たく、ゴツゴツしていて座るには居心地が悪いだろう」など常に自身の経験に基づいた、知覚を瞬時に働かせて物事を見ています。宮原は様々な素材と技術力を活かし、このような鑑賞者の「日常の認識」を惑わせる立体作品を数多く制作してきました。
触れるとぐにゃっと歪む木製の椅子やドアノブ、ゆっくりと模様が変わっていく大理石のブレートなど、自ずと私たちが決めつけている、モノのあるべき姿をことごとく裏切っていきます。通信技術の発達に伴い、日々、スマートフォンで膨大な情報量を受け流す現代の私たちに、表面的に得ることのできる本質の脆さを宮原の作品は突きつけます。
しかし裏を返せば、その仮想的な身体感覚は、タッチパネルや音声認識をはじめとするデバイスの向上によって、むしろ科学技術に裏付けされたリアルな認識へと変容を起こしている、という点でも宮原のアプローチは注目すべきでしょう。

 彼の代表作「missing matter -After the future.-」は3mの巨大な黒い球体ですが、近くに寄って見ると、アスファルトでできています。本来、地面を覆い、足元を支えるはずのアスファルトが背丈よりもはるかに大きく目の前に立ち現れる様は、鑑賞者の前提を覆し、恐怖さえ与えます。化石燃料の枯渇によって、アスファルトという素材に対する認識や関わりに、大きな変化が起きることを予感させる象徴的な作品です。
このように、宮原嵩広の作品は人間の身体と対峙した際に起こる干渉や、相互関係の予定調和を、いかに崩していくかを追求しています。

 今回の展覧会では、磁石に反応する磁性流体という素材を使ったキネティックアート作品を中心にインスタレーションを展開いたします。刻々と形や質感の変わり続ける立体作品の様相は、鑑賞者の時間感覚を狂わせ、魅了することでしょう。また、会期中にはトークイベントの開催も予定しております。詳細につきましては弊廊ホームページにて改めてご案内させていただきます。

5年ぶりの開催となり満を持して臨みます、宮原嵩広の個展「Null Pointer Exception」を是非ともご高覧ください。

作家ステートメント

 通常、人は“もの”を認識する際「見える=在る」であったはずだ
「仮想現実において見ること」が視覚の能力限界値を超えつつある現代においてこの眼と、外部デバイスとの差異は薄れ「見える=在る」という実在感覚、既存のリアリティは更新されてきているのではないか。現実と仮想現実が混線した先で、見えることと在ることの境界としての表面はどのように変化し規定され”もの”は存在し得るのか。グレアム・ハーマン著「四方対象」の10のカテゴリーと彫刻概念を交錯させ(下図参照)、“もの”が在ること、視覚的に見えることに焦点を合わせ、“もの”の現前性を問うてみようと思う。再び知覚の脆弱性をつき盗まれた眼を取り戻すために。

宮原嵩広

宮原嵩広

Null Pointer Exception