毒山凡太朗
反転する光
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毒山凡太朗(どくやま・ぼんたろう)は 1984年福島県に生まれ、2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけに、作家活動を開始し、「六本木クロッシング 2019:つないでみる(森美術館)」や「あいちトリエンナーレ2019 : 情の時代(四間道・円頓寺エリア、名古屋市)」をはじめ、国内外を問わず精力的に活動を続けてきました。
記憶に新しい昨年開催されたLEESAYAでの個展「SAKURA」では、時代によって「公共」のために利用されてきた桜のもつ、歴史的重層性と政治的多義性に焦点を当て、ナショナル・アイデンティティ、戦争、経済、五輪など様々なテーマに鋭くアプローチした作品群を発表し、大変ご好評をいただきました。
本展は今夏に行われる帰還困難区域ツアープロジェクト「IGENE」のプロモーションを目的とした展覧会です。毒山が作家活動を始めるきっかけとなった原発事故から、9年が経った昨年、初めて故郷・福島の帰還困難区域に入域しました。その経験から、いかにメディアや社会、自分自身がアップデートされていない情報で区域内や原発、福島について語っていたかを痛感し、ツアーの開催を決意しました。参加者と共に各所を巡り、現状についてより理解を深め、リアリティのある議論を交わしたいという作家の想いに弊廊も賛同し、ツアーのプロモーションを助成することといたしました。
展覧会ではツアー内容が垣間見える映像作品と、福島を代表する作家の高村智恵子に、ひとしおの思いを寄せる毒山が、「レモン哀歌(智恵子抄)」を手がかりに新作群を発表いたします。また、ツアーに関する詳細情報の案内や、チケット販売も行う予定です。
ツアーの内容から、公的な助成金などを得ることが難しいため、全て作家が自弁で行う予定です。一人でも多くのお客様にご賛同と温かいご支援を賜りたく、毒山凡太朗の「反転する光」を是非ともご高覧ください。
作家ステートメント
今日初めて帰還困難区域に入った。
約9年、外からしか見てなかった。
外から想像してただけだった。
街も人も人の心も変わった。
これからまた変わっていくんだろうけど、変わらない、変えられないところもあって。
時間がねじれてく
心もねじれてく
中に入れば全部分かるわけじゃないけど
誰かと話したい、けど誰と何から話せばいいかわからない。
2020年8月某日の日記より
毒山凡太朗