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髙橋銑

聞かれなかった声


作家ステートメント

ものに生死をみるとき、それが物質的な劣化と同じ軌道を描くとは限らない。
例えば干からびたニンジンも、放散しきった香気も、溶け落ちた飴もその状態が死を意味しない瞬間がある。
ある日私は、体に一本の直線を彫ったが、それが私の命と同じ時間を全うするかはわからないし、レコードに刻まれた一本の線はどれだけ歪もうが永遠かもしれない。

ここに「聞かれなかった声」がある。
それが誰にも聞かれることがなかったとしても、誰かの耳に正確に届いたとしても、ただ届いただけで伝わることがなかったとしても、あるいは生み出されることさえなかったり、この先この世から完全に消え去ってしまったとしても、それらは全て「聞かれなかった声」そのものである。そして、これは作品の生死を考える時迷い込むトートロジーにひどく似ている。

聞かれなかった声