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村松佑樹

SPACY


村松佑樹(むらまつ・ゆうき)は1988年山梨県に生まれました。東京工芸大学デザイン学科卒業後、雑誌を中心に様々なメディアに挿絵を提供しつつ、並行して展覧会の開催や、アーティストランスペースの運営を行ってきました。2018年にはワンダーシード2018に入選。COVID-19をきっかけに現在は栃木に拠点を移し、精力的に制作活動を行なっています。

村松の作品には静物としての道具や器、料理、植物など身の周りの至って日常的な風景を描いてきましたが、コロナ禍以降、その傾向はより色濃く現れています。自身の周りを描くことは、きちんと暮らしを送り足元を固めていく感覚があると作家は話します。2020年に行われた個展では、作家の祖母が住む山梨の土や石を砕いて絵具を作り、手漉き和紙の産地である生まれ故郷の山梨県市川三郷町の紙を用いて完成させた作品が展示されました。

彼の作品を見るときに、民藝(民衆的工芸)がふと頭をよぎります。民藝運動とは、柳宗悦らが1926年に提唱した生活文化運動です。各地の風土から名もなき人の手によって生み出され、生活に根ざした日用品には、用に則した「健全な美」が宿っており、それまでになかった新しい美の価値観を提示しました。100年前に掲げられた民藝運動の言説については、様式化の先にある矛盾や、文化的バイアス、コマーシャリズムについてなど様々な指摘があり、社会の様相が一変した現代においてこの言説がどのような役割を担うのか、未だに明確な答えは出ていません。ただ、平凡さを特別と捉えずに平凡のまま価値あるものとして見澄ますまなざしが村松の作品では実践されており、それは生産性や効率、経済性が優先され「完全」でなければならない現代において、不完全さに対する寛容があるように思うのです。

今回の展覧会では、東京を離れ、描くことと暮らしを尊ぶ村松の誠実な態度を窺える新作群で構成されます。新年初めてのLEESAYAでの展覧会SPACYを是非ともご高覧ください。

作家ステートメント

今置かれた状況下で出来ることの最大限を模索した結果、最もエキサイティングに向き合えるのが景色と静物だった。
珍しい香りのお茶を入れ、いつものアトリエに座ると自然に立ち上がってくるイメージがあり、パステルと顔彩を手に取った事から、本展の作品制作は始まった。
思えばこれまでも今も、自分にとっての制作の動機はそのように自然発生的に始まるものであり、同時にいつの間にか形作られるものであり続けている。
それがありがたいし、とても面白い。

SPACY